熊本大学工学部西洋建築史研究室(吉武准教授)ではギリシアにおいて遺跡の現地調査を実施しています。調査では遺跡から発掘された建築部材を実測し記録に残しますが、曲尺などを駆使し、手測りで部材の複雑な形状を記録しています。特に柱頭部材のような複雑な装飾を伴う部材では、作業に多くの時間を要する他、実測者の技量が必要とされます。そこで弊社は、写真解析(SfM/MVS)を用いて、調査の支援を行いました。
事前に調査団に写真の撮影方法を指導し、現地での写真撮影は調査団が実施しました。撮影した写真をメールで受け取り、直ちに写真解析を行い、写真3Dモデルとオルソ画像(展開画像)をレイアウトしたCADデータを作成し、調査用資料として現地に提供しました。複雑な装飾の形状もモデル化できているため、データを参照することで容易に図化することができ、調査の精度向上、効率化を実現しました。具体的には、写真3Dモデルから円筒形を基本とする柱頭の表面に施された装飾の正投影図を作成することで、レイアウト図から実測図面の作成を効率的に実施できました。また、水平方向の断面を作成することで,実測した柱頭が円筒形の半分の形状であったことを検証することができました。
得られたデータは、PC上で対象を自由な視点から閲覧したり、寸法や断面を参照することも可能です。現地で確認できなかった箇所などを後から確認したり、詳細な記録保存資料として様々な活用がなされています。
 オルソ画像レイアウト図 |  実測図面(展開図) | 
モデルの3㎝ピッチの断面線・右図は装飾部の水平断面 |
|