写真測量
業務事例:世界遺産原爆ドームにおける写真測量/広島県(1996)
原爆ドームは、第二次世界大戦末期(1945年)に原子爆弾によって破壊された、広島県産業奨励館の残骸で、戦後、平和記念公園内において当時の姿のまま保存され、1996年12月には世界遺産に登録されました。
1996年、その状態を3次元座標で厳密に管理するために、写真測量を実施し、後世にそのまま伝えていくための基本的資料を作成しました。
原爆ドーム
写真測量とは
写真測量とは、写真という、平面上に写された像の形から、被写体の空間的な形状を計測する技術を
いいます。言い換えれば、写真に写された二次元の幾何形状から被写体の三次元形状を求める技術と
言えます。この手法を用いる事により写真画像(中心投影)の歪みを修正し、地図と同様の精度を備えるオルソ画像(正射投影)を作成する事が出来ます。
写真測量の流れと方法
1標定点設置及び測量
写真測量の外部標定を行う際に必要な座標を得るために、対象物に標定点(測量ポイント)
を貼り付け、その点のXYZ座標を測量します。
右写真は、ドーム鉄骨部分に標定点を設置した写真です。
標定点の設置状況
2現地写真撮影
対象物を写真測量用カメラで撮影します。
そのとき、1組(60%オーバーラップ)の写真内に最低6点以上の標定点が写るように撮影します。
写真撮影状況
3解析図化(デジタル化)
解析図化機の中に立体写真を再現し、3次元座標を取得します。
ステレオモデルによる図化測定
解析図化状況
一対のステレオモデルは、解析図化機の中では左、右の眼で右図の様に見ることができます。画面上のポイント(標定点)
を抽出したい部位に立体的に合致させることで、その点の座標(X,Y,Z)を算出し、3次元モデルをコンピュータ内に構築します。
デジタルCAD図作成
求めた3次元座標値からCAD図を作成します。
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デジタルCAD図
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国家座標系の中の原爆ドーム
4測量結果の応用展開
写真測量か得られた三次元座標をもとに様々な応用技術へと展開できます。ここに示す事例はほんの一例です。
CG作成
写真測量で得られた各点の三次元座標から正確なCGを作成することができます。座標値からCGモデルを構築し(左画像)、オルソ画像をマッピングして作成します
(右画像)
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CGモデル
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オルソ画像をマッピング
座標管理システム
座標管理システム画面
写真測量で得られた各点の座標表示、及び定点の挙動を立体的に表示可能なシステムです。
このシステムを用いることにより画面上では平面的に存在している様に見える部材各点及び観測定点の挙動を
任意の箇所から表示することができ、部材面の変状をより立体的に把握することが可能となります。
写真管理システム
写真管理システム画面
各部材の写真やなどの膨大な調査情報をデータベース化し、座標管理システムから迅速に検索し、文化財的な調査研究を支援します。