文化財の修復・活用支援/石垣修復支援システム(修復設計の補助)
業務事例:皇居東御苑内本丸中之門石垣修復工事における「石垣修復支援システム」の構築/東京都(2007)
皇居東御苑内本丸中之門石垣修復工事
皇居東御苑内本丸「中之門石垣」は、江戸城の中でも最大級の巨石(35t前後)が使用され、目地がほとんど無い、整層・布積みの石垣です。1658年に普請され、1704年に地震で倒壊した石垣を修復し、その後約300年の間に、石材の移動による目地の開き・孕み、荷重や風化による破損・剥離等が発生していたため、安全性確保を目的に2005年8月より20ヶ月かけて解体・修復工事が行われました(施工:清水建設株式会社)。
石垣修復支援システムとは(※特許取得)
石垣修復支援システムとは、石垣の3次元モデル(個別の石材を3Dレーザで計測し、3Dモデル化したものを現況位置に配置したもの)を使用し、個別の石材を順次積み上げて復元形状をシミュレーションしたとき、例えば石材の天端と底面とが干渉した場合その干渉状況をリアルタイムに復元検討に反映させ、設計を支援するシステムです。
城石垣の修復では石材を適正に配置し、形状を当時の姿に如何に復元するかが、修復設計上重要な検討課題となります。また石工の伝統的な技を修復設計・修復工事へ反映させることも重要です。そのため、石工の参画、文化財担当者との相互理解も容易なよう「石垣修復支援システム」を開発し、修復設計に利用しました。
システム画面
受賞石垣修復支援システムが、「国土技術開発賞 最優秀賞」、「第2回 ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞」を受賞しました。
システムの流れと機能
1石材の3Dモデル化
個別の石材を3Dレーザで計測し、3Dモデルを作成します。
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3Dレーザ計測状況
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石材3Dモデル
2石垣3Dモデルの現況配置
作成した個別の石材モデルを現況の通りに配置し、石垣3Dモデルを作成します。
東面石垣3Dモデル
3石垣の修復線形検討・決定
石垣の平面形状、勾配と反りなどを見え方・景観を確認しながら、修復線形を三次元的に検討し、修復線形を決定します。
4石材の位置検討
修復線形案に対し、石材を半自動で改修法面に沿って自在に移動させ、石材の移動量を検討します。石材が干渉した場合、その干渉状況をリアルタイムに計算し表示するなどの機能をもちます。個別の石材を選択し、システム上で、移動・回転させながら、干渉を確認することも可能です。
石垣面を改修法面に沿って自動すりつけ
石材間の干渉解析
5石材の位置決定
石材を移動させ、修復後の石垣の形状を決定します。